私は_____。
私は独りぼっち。


 私は探し回った。
自分を受け入れてくれる場所を。
自分が安住出来る地を。
でも、何処からも拒まれた。
私が、___という理由だけで。

私の居場所は、なかった。




【dream-0.0】
…夢の始まり
-First Question.-




 そこは、自由な世界だという。
私は、そこへ行く事にした。
現実世界に居場所がないのなら
そこで探せばいい。

 そこは、静かだった。
人の気配はしなかった。

私は歩いた。
何もない。
私は走った。
何もない。
私は、泣いた。
何も、ない。
そんなこと、分かっているのに。

そんな時、
彼を見つけた。
彼は二本の刀を持っていた。
彼は傷付いていた。
身体はぼろぼろだった。
真っ赤な液体。
血が流れ出ていた。
刀にも、同様に。
彼の右目には、深い傷があった。
その目で、私を見る。
第一印象は、怖かった。
でも、彼は
別に何とも言わず
ただ私をじっと見つめていた。
怖い、
怖いけど
自然と恐怖は失われていった。
その時
彼は唐突に話しかけてきた。


「……泣いてるのか?」
「え……?」


 そう言われて、自分が泣いていた事を思い出す。
慌てて涙を拭う。そして彼に問う。


「……貴方は誰?」
「俺は、霊術師」


 暫くの沈黙。
霊術師なら、刀を使う事はないはずなのだが。


「……どうして怪我してるの?」
「……」


 彼は苦い顔をしただけで、答えなかった。あまり聞いてほしくないのだろうか。何か言葉を紡ごうとした途端、遮るように彼は言った。


「お前はどうして此処にいる」


 彼が私を見る。
一瞬、ためらう。しかし、私は答えていた。


「私は……、逃げてきたの」


 それが、本当の答えかはよく分からない。
自分でも、分からない。
でも、彼はじっと私を見つめているだけ。


「貴方もそうなの?」
「……さあな」


 そして彼は刀についた血を払い、鞘に閉まった。
次に、こう漏らす。


「_____」
「え?」
「……俺の名前。そう呼んでくれればいい」
「……?」


 彼はその間、常に冷静だった。
いや、薄いのだ。
普通の人間よりも、感情が薄いのだ。
何故なのかは分からない。しかし、私には間違いなくそう感じられた。


「_____、か。……長い……言いにくい」


 彼は何だか不思議そうに私を見ている。相変わらず、感じられる感情は淡いのだが。


「……__!そう、__!」


 彼は怪訝そうにこちらを見る。
それでも私は、言った。


「今から私は、貴方の事__って呼ぶね」
「……」


 一瞬だけ、彼が戸惑ったように感じたが、すぐに平静を装い、こう呟く。


「……お前の名前」
「あっ、言ってなかった。えっと……私は_____」
「_____……」


 彼は考える素振りをして、それからこう言った。


「……じゃあお前は___」
「へ?___?」
「お前はこれからどうするつもりだ」
「え?」


 たじろく私を無視して彼は問いかける。
そういえば、考えてなかった。


「……分からないけど、暫くはここにいる。__は?」
「そうか……なら、俺も此処にいる」


 そう答えると、軽くため息をついた。
次第に、彼とは打ち解けていた。

この時。
夢世界で出会った時、
彼は、
私は、
既にもう一つの始まりを
築いていた。



「夢世界。ここは____が治める守域だ」

「……うん、知ってる」

「お前は、それを__にきたんだろ」

そういえば―――







 それから、夢世界が歪み出したのは、また別の話。








 




「それは君だけの、たったひとつの夢」


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